買い逃し本のフォローキャンペーン中なので、黒木あるじと福澤徹三本が続く。
これまたテーマ別編集本の一つ。
今回は学校、ということで、怪談の宝庫でもあり、比較的興味深い話が集まってくれた。
「ペンフレンド」語り手が文通していた相手は、ただの怪しい人だったのか、それともこの世のものでは無かったのか。
こちらから送った手紙が全て廃屋のポストに突っ込まれたままで、それでもやり取りが続いていた、ということからして、後者の可能性の方が高そう。
ただ、となるとあの世の人が雑誌を使ってペンフレンドを募集する、というそれはそれで何ともシュールな展開になってしまう。
やはり一応実在の人物がいるということか。
だとしたら、一体どんな輩なのか気になる。
やはり実際は少女などでは無いのだろうな。
そんな相手に、謂われなき呪いを掛けられてしまい、何とも不幸なことになってしまった。
まあ、一度具合が悪くなったのと怪異に出遭った位なので、それ程酷くは無いものの。
「校歌」これも山の神による強烈な神罰。
神さまはすぐに人の命を奪ってしまうから怖い。
しかも、その理由が自分を校歌の歌詞に入れておらず隣町の山は入っているから、だなんて、ちょっと大人げ無さ過ぎやしないか。
「給食」カバンの中に流し込んだフルーツポンチが、時空を超えて大人になった自分のカバンの中に出現する。
確かにそんなことがあっても不思議は無いか、とも思いつつ、よく考えれば、同じ人間のカバン、とは言っても、場所も物も全く違うわけだし、どういうメカニズムで瞬間移動してしまったのだろう。
怪談、というより、一種の超能力譚なのか。
「花瓶」この話も神罰のように苛烈な内容だ。
「何」が何のために用意したのか判らない花瓶と花。
そこに入っていた紙を破り捨てただけで少女は命を奪われてしまう。
更に、供養を担った寺さえも数日で焼失の憂き目に遭う。
これからすると、紙を破ったことよりも、花瓶に触れ関わったことが原因、なのかもしれない、とも思える。
そうした仕業、やはり神のもの、と考えた方が納得がいく。
ただ、だとしたらいかなる神さまが何故そのような行動に出たのか、という謎が新たに生じてしまうことになる。
短いけれど、強烈に印象的な一品。
「イジメ」事故や事件の現場に備えられているものを持ち帰ると災いがある。
時折語られるこの事例、ここまで凄いものはまあ聞いたことが無い。
ちょっと腑に落ちないのは、事故死しただけの霊に、そこまでの力があるものなのか、ということ。
前の話の神ならともかく。
そして、人を呪うにはそれなりの報いがある、ということを改めて教えられる。
「運動会」怖い話ではなく感動出来る怪談として一級の出来。
これまで聴き読んできた数ある話の中でもトップかもしれない。
どうにも号泣を止められず。
しかも、こういった亡き家族に纏わる話は、ほとんど語り手(やその家族)のみが体験し記憶のみに留まっているもの。
この話の凄いのは、写真、という客観的な証拠によって、この出来事が夢や幻などでは亡かったことを証明してくれていること。
こんな怪異なら遭ってみても良いかも。否、この扉を開けてしまうのはいずれにせよ危険か。
「記念日」何とも不思議。そして、ここで語られず明らかにならなかった真実が何なのか、焦がれてしまう。
どう考えても、この学校には何かある。
ただ、この日学校に来ないこと以外のタブーはなさそうだから、それ程危険なものではないのだろう。
しかも、この語り手、30年経って著者にこの話を語った後、行方を眩ましてしまう。
まあ、怪異ではないのだろうけれど、何しろ怪異の核が見えてこないだけに、余計気を回して勝手に怖くなってしまう。
妙なのは、先生達が鳥を片付けていたのを見ていたのに、翌日屋上に登ったら鳥が一羽もいなくなっていた、とわざわざ語っている。
当たり前ではないか。それとも、何か別の意味合いがあったのか。
「恋文」著者が冒頭に書いている通り、この話には、いわゆる怪異は登場しない。
余談では都市伝説的な怪異が起きてはいるけれど。
しかし、明らかに常識の範疇には収まらない、何らかの出来事なり問題があったことは間違いない。
妙な手紙が下駄箱に入っていたことは確かなのだし。
しかも語り手の父母にとってはそれは予想していた、あるいは覚悟していたものでもあったようだ。
その対処法が良かったのか、家族にはその後何も災いなども無かったようでもある。
ところが、話中気になることも一つ。
その手紙への対処に向かった両親、帰ってくるまでの一晩で髪が真っ白になっていた、という。
しかし、これはあり得ない。
髪は、既に生えてしまった段階で色が落ちることは無いからだ。
敢えて染めてきた、というなら話は別だけれど。
まあ、それこそが怪異、ということなのかもしれない。
また、父の御骨については、病気ではなくとも骨粗鬆症の人、というのはいてもおかしくは無い。
ちょっと不思議ではあるけれど、怪異と断定出来るものではない。
前回紹介した「無惨百物語 ゆるさない」に比べてしまうと大分薄まってしまっているような印象はある。
しかし、この本では怖い、とまではいかず強い印象を残してくれる、という程では無いものの、何だか不思議な話は結構あった。
物理的にかなり薄い本のこのシリーズの中では、味わいどころの多い一冊にはなっていた。
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黒木あるじ 角川春樹事務所 2014年07月