加藤 一/「忌」怖い話 大祥忌

 冒頭不思議な話が続き、これは久々に(このところ読んでいる本としても、著者の作品としても)いけるか、と思ったのだけれど、その後恐くも不思議でもない話ばかりになってしまい、残念。
 結果、印象に残る話も少なかった。

 「バイキング」これは何とも恐い、心霊的な恐怖とは違うけれど。
 とにかく、コースター類に乗っている最中にベルトが無くなってしまうなど、言語道断。
 生きた心地がしない、などというレベルでは済まなそう。そのまま発狂してしまってもおかしくは無い。
 しかし、外れたのではなく、消失。
 明らかに現実的に説明できるような現象ではない。あり得ない。
 一体何がどうなればそんなことが起きるのか、何としても知りたいところ。
 隣の伯母さんに助けた記憶が全く無い、ということも含め、客観的な証拠が全く無いのはちょっとだけ気になる。

 「お化け屋敷」鏡というのは、何だか怖ろしい。
 これも、そんな思いを新たにしてくれるような話。
 この時、一体何を写し出していたのだろう。

 「カメラ」捨ててしまった筈のカメラが、ずっと放置されていた荷物の中から発見される。読んでいる限りでは、人為的なものでは無さそうだ。
 撮った写真はどうなっていたのだろうか。

 「箸を」実に親切な神さまだ。
 人の歩く向きを強制的に変えてしまうことも出来るとは、なかなか強大な力だ。

 結構な割合が二人の語り手に拠ってしまっている。
 それも全体として内容が薄くなっている要因の一つだろう。
 まあ、それだけでなく、やはりどうにもこの著者の怪談は小粒になってしまっている。
 何が原因かは知らないけれど。

 やはり、今回も全く輝いてはくれなかった。

「忌」怖い話 大祥忌posted with ヨメレバ加藤 一 竹書房 2021年05月28日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る