プロの怪談師、ということだけれど、怪談はどれも明らかに非力。
ライブもこんな感じなのだろうか。
しかも前作でも指摘した文章の稚拙さは全く改善されていない、というか悪化した感すらある。最早読むに堪えない。
怪異自体ほとんど新奇性も特異性もないものばかりなのに、それを文章で補うどころか更に足を引っ張ってしまうので、もう目も当てられない。
「豊平峡ダム」これも王道ネタ、ではあるけれど、作中で怪談を語る、という二重構造になっており、悲劇的な顛末がそれなりに印象に残る。
リョウヤは、怪異を軽視して再訪してしまったのか、それともやはり呼ばれてしまったのか。後者と考えるとより怖くなる。
ただ、途中、この著者ならではの「ギャーーー」やら「こわいでしょー」などの幼稚な表現が多発し、著しく興を殺ぐ。
これ、稲川氏が語ったら結構怖い話になりそうだけど、現状では中途半端におちゃらけた話にしか感じられない。
「迷子」幻の場所、に近い話。
森の中で彷徨い続け、外側の世界も見えているのに一向にそこに出られない。
実際に体験したら、実に怖くて厭なものだろう。
途中ピンクのヒルなど明らかに常軌を逸したものが出て来るのに、それに付いては皆がノーリアクションだったから、ということでほとんど触れられず。勿体ない。
一体どういうところに迷い込んでしまったのか。
最後、鹿に出会った後やっと出られるようになった、というのは、この動物、と思ったモノが山神さまかそれに近い存在だったのではないだろうか。
因みに、この著者の話には、やたらと車で心霊スポットに行く、という話が多い。
北海道の流行、なのだろうか。
「明晰夢」基本は夢の話の筈なのに、その夢の世界の住人と覚しき存在が現実に現れてきた、というのはなかなかに怖い。
しかも、この語り手には事実では無い記憶まで植え付けられている。
次のターゲットとして狙われている危険性も充分に考えられる。
また、夢の話とは言え、そこで体験している情景はビジュアル的にも興味深いし、行動も訳が判らずとても気になる。
「札幌市内の産婦人科」優しくアドバイスしてくれるお婆さんと思っていたら(この世の人で無いことは予想付いていたけれど)、まさか母子を亡き者にしようとする悪意の存在だったとは。
驚きの結末だった。
いわゆる悪魔のような代物なのだろうか。
札幌編と銘打っているせいか、地名やスポット名については、変なぼかし方はしなくなった。
しかし、それ以外は全く変わっていない。
既に記した文章力の問題も、宣言してから体験者語りに入る面倒臭さも。
あまりに引っ掛かる(良い意味でも)ものが無いせいか、やけに早く読み終えてしまった。
前回を引き継いで言うなら、やはりこの作家には期待できそうには無い。
ただ、だからもう読まない、とまで言い切れない自分がもどかしい。
万が一、思いも拠らない大傑作を物してくれるかもしれない、という儚い期待を持たずにはいられないからだ。
多分、次も買ってしまうのだろう。
そして、また失望するのだ。
北縁怪談 札幌編posted with ヨメレバ匠平 竹書房 2021年06月29日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る