響 洋平・村上ロック・シークエンスはやとも・徳光正行・牛抱せん夏/現代怪談 地獄めぐり 羅刹

 今回は特にテーマのない共著。
 ただ、一人を除き微妙な著者が多かったため、気になる作品も特定部分以外ではごく限られたものとなってしまった。

 その一人というのが村上ロック氏。
 読むのは初めてだと思うけれど、今回発表されているどの作品もユニークで面白い。
 これは凄い逸材新人の登場だ。

 「窒息死」これまで語られてきた心霊写真の中で、文字が描き出されている、というものは聞いたことがない。斬新だ。
 しかもその写真の持ち主が窒息死してしまったのは勿論、それを見た友人まで同じ死を迎えてしまう。
 この語り手だけが大丈夫だったのは何故なのだろう。

 「誕生日」実に奇妙な話だ。
 発端はバースデーケーキのネームプレート表記がおかしくなっていたこと。
 これもささやかとは言え怪異だ。あまり間違えるようなものでもないし。
 そこから誕生日毎に悪化していく怪異、かと思ったら、突如急展開。
 実は怪異の根元となっていたのはマネキンである可能性が。
 更に最後の語りで一気に凄い話となる。マネキン(たけし)とたかしが入れ替わってしまっているかも、というのだ。
 語り口も巧く、あれよあれよと言う間に翻弄され叩き落とされる。
 まさか本当に入れ替わってしまったのだろうか。

 「伊藤さん」前半だけでもなかなか不気味な話だったのに、後半これも思わぬ結末に。
 幻覚、夢のようなものに引き摺り込まれて、死の方に引き摺られてしまったのだろうか。
 それとも、前半部分は死の直前に見た白昼夢だったのか。
 ちょっと気になるのは、伊藤さん本人の語りではなく、語り手の母親からの話なのに、妙に詳細に記されているところ。家族でも無い赤の他人の話をこんなにくっきりと覚えているものだろうか。あるいは追加の取材などを加えて再構成したのだろうか。

 「留守番電話」そう長くはない話の中に幾つもの怪異が入れ子になっており、その度に印象が変わる。
 著者の怪談のような都市伝説のような話も、いずれにせよかなり不気味で印象的なのだけれど、それが時間も場所も人間関係も全く異なるところでぴたりと共通している、となると、それはもう立派な怪異だ。
 そして後半は見事にビジュアル系の怪談。情景を想像すると相当に怖ろしい。
 ただ、怪談本ではよくあるように、語り手が「問題はそこではない」と言う。
 でもやっぱり彼の所にいる筈のない祖母がいることだって充分に問題なのではないか。
 話の意外性を強調するために多用されるくだりだとは思うのだけれど、この言い回し、どうも気になってしまう。
 普通に「更に怖ろしかったのは‥‥」などと受けていった方が自然なのでは。

 「音・音」なぜ、その時点より未来に、量販店で接することになる映像の音だけを先に聞くことになってしまったのか。
  しかもその映像自体も変だ。突如映りだしたということは臨時ニュースなのだろうけれど、構成として何だか妙だし、書きぶりからするとどうもこれに該当する事件があったようでもない。これについては著者はもっときっちりと検証すべきだとは思う。
 それに第一、量販店のTV映像というのは通常DVDなどで効果の高い映像と音の組み合わさったコンテンツを流すもので、それどころかTV回線など引かれていないのが一般的だろう。そこもおかしい。
 語り手のことを見て拝んでいったという外国人の存在も不思議。

 「過ち」ちゃんとした怪異としては、最後にある元彼の仕業であろうノック音だけ、なのだけれど、全体にどうもおかしな話であって、とても興味を惹かれてしまう。
 単純に彼女がいわゆる「ファム・ファタール」である可能性も高いけれど。
 語り手には是非また再開して、その報告を行って欲しい。もう怪談じゃ無いかもしれないけれど、何とも気になって仕方ない。

 「初恋」病院で一緒に遊んでいた子供が、既にこの世のものでは無かった。
 これだけなら時折聞いたりすることもあるけれど、その相手とその後電話で話したことがある、というのは珍しい。
 そして、語り手はこれを初恋として良い思い出にしているようだけれど、実のところ彼女、この相手にあの世に連れていかれそうになっているわけで、そんなに良いものというわけではない。もしかすると、ずっと虜になったままなのかもしれない。
 何だか今後にこの続きがありそうで、それが何とも怖い。

 また、共著の一人、シークエンスはやとも氏の作品群。
 演出上のこととは思うけれど、すべて一人称の語り。これは木原氏も行っていたものではあるけれど、状況を飲み込むのに手間が掛かるため、良い手法とは全く思えない。結局はっきりしないことが幾つも残ってしまうし。
 さらに問題なのは、どうも効果を狙い過ぎている文章・内容になっていて、実話怪談とは到底思えず、創作としか感じられないこと。
 もし本当に創作怪談だとしたら言語道断。こうした実話怪談本に入れて良いものではない。
 これは編集サイド含め、もう少しきちんとした方が良い。
 竹書房も怪談本月5冊とあまりに無謀な出版計画を継続しようとするあまり、粗製濫造の感が強くなってきているのはいただけない。

 こうして感想を書いた7話中4話、過半数が村上ロック氏の作品であった。
 まだこれからの人だとは思うけれど、期待は充分。
 おそらく読者の評判も良いとは思うし、単著に出会える日も近いだろう。
 期待して待ちたい。

現代怪談 地獄めぐり 羅刹posted with ヨメレバ響 洋平/村上ロック 竹書房 2021年01月28日頃