籠 三蔵/現代雨月物語 物忌異談

 それほど怖いとか強烈な印象を残す作品は少なかったけれど、何だか奇妙な、目新しいものが結構あった。下記に挙げる作品以外にも、ちょっと気になる、というレベルならそれなりに沢山あった印象。
 また、好きなジャンルである土地や家に纏わる話が多かった。

 「横断」この話などが、この本の典型的な例。
 そう怖いわけでは無いし、出てきた霊の姿や動きは珍しくない。一方で、それに先立って遮断機が下り警報が鳴り続ける、という物理的な異常を起こしている、というのは不思議だ。しかもその理由もよく判らないし。

 「魔物(前)」夢ネタではあるのだけれど、その内容は実に興味深い。まるで小説か映画のようにドラマティックで幻想的な物語だからだ。
 その後の取材時のエピソードは、何だか無理矢理な感じもする。

 「家の中の墓」家を解体した後、そこに出現した墓。一体どういう形で存在していたのだろう。
 しかも、それを取り込んだ(と推測される)形で建てられた新居。どんなになっているのか。
 それでも、何事も無い、訳では無さそうなのが気になる。住人の話を是非聞きたいところなのだけれど。
 現実に怪異は一つも語られてはいないものの、とても興味深い、そして好みの話ではある。
 「喰光」リーダーの解釈は、何らかの根拠があるようでもなさそうなので無視するとして、闇に包まれる怪異、というのは珍しい。
 これもその正体が何であるのかが謎だ。

 「顕彰碑」常に周りを威嚇し災いを与えている巨人。これはかなり怖い存在だ。
 ただ、この作品が気になったのは、途中で江古田の公園のことに触れられていたから。
 加藤一氏も一時何回も取り上げていたこの公園、というかその横にあった結核療養所。
 実は、小学校低学年の頃までこの比較的近くに住んでおり、一度友人たちとこの療養所に忍び込んだことがあるのだ。
 裏の方には古い旧館のような建物があり、更に入り込んで綺麗な庭園らしきところに出た、ところで病院の人に見つかってしまい、確か慌てて逃げ出したような記憶がある。
 勿論、そこで何かの怪異現象に遭遇した、ということも全く無かったのではあるが。
 その懐かしさが一番ではあった。

 どうも怪談の前後に著者と語り手とのやり取りがやたら多かったり、何だかあまり必要性の感じられない文章が書き足されていたりするのが緊張感を欠く。
 さらに、著者が現地を探索したり考察を加えたり、といった語り、というよりも研究報告のような要素も多く、それらはどうも興を殺いでしまう。
 それはそれとして個人ブログのようなもの、と思えば無碍に駄目、というものでも無い気はするも、怪談本でやることではない、とも思う。

現代雨月物語 物忌異談posted with ヨメレバ籠 三蔵 竹書房 2021年02月27日頃