黒 史郎/異界怪談 暗狩

 以前から読んで来た作家さんの一人の筈なのだけれど、ブログでは一度も感想を書いていない。結構久々の単著なのだろうか。
 というのも、今回読んだところ、かなり相性が良くないことに気付いたからだ。
 これが今回偶々なのか毎度のことなのか確認しようとしてみたら、ますで情報が無かったというわけだ。
 どうも面白いと思える作品がえらく少なかった。最近皆好調だっただけに残念。

 「足に-」水の音がだんだん近付いていながら辿り着けず、通りに出た瞬間に逃げてしまう、というのは不思議だ。
 前半と後半の怪異は繋がっているのだろうか。あまり関連があるようにも思えないけれど、狐狸の類に化かされた、ということであれば有り得るのかもしれない。それなら水音の怪も納得はいく。

 「すいません」落ちで一気に怖くなる話。語り手の体験自体はそれ程怖いとは感じないし。先輩に何が起きていたのかは当然とても気になる。
 ただ、語り手の結論のつけ方はちょっと妙な感じがあり、どれだけまともな人なのかにちょっと疑問も残る。

 「六畳間のカーテン」現在進行形の怪談であり、これからどうなるのかが注目される。
 さらに家族が何故全く取り合ってくれないのかもちょっと不思議。何か取り憑かれてでもいるのだろうか。

 「未知夢」家族の危機がその時点で見える、というのは特殊な能力に思える。未来のことでは無いから予知夢では無いのでは、とも思ったのだけれど、オチで何とも言えなくなった。そこでは確かに予知夢と思えるものも見ていたようだからだ。
 この行方も勿論知りたいところだけれど、父が見えていたのは現時点と未来の両場面なのか、未来だけだったのかも何とも気になる。どういう形で見えていたのだろう。もし未来のことだけだったら電話で確認するのはおかしいし。

 「ヨコハシ」果たして怪談なのかはぎりぎりだけれど、不気味さではなかなかのもの。確実では無いにしろ、指まで失っていたとしたら一体何が起こっているのか知りたくて堪らない。どう考えても関わらない方が無難だけれど。
 ただ、全体に不倫によるストレスが相当にかかっていることは間違いなく、人格障害である可能性も捨て切れない。

 最後に挙げた作品のように、どうも読んでも怪談なのこれ、と思ってしまうようなものが少なくない。
 語り手の話のオチについても何故そう考えるのかを含め納得出来ないような結論に至ってしまっていることも多く、ますますもやもや感が募る。
 かと言って岩井志麻子氏のように人間の闇を描く面白さ、というのに到っているわけでもないので、どうも不完全燃焼のまま読み終えてしまった。 

異界怪談 暗狩(3)posted with ヨメレバ黒 史郎 竹書房 2020年06月27日頃 楽天ブックスで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る