この方もほぼもしくは全くの初めて。
初期の段階で女性と判り安心して読めた。著者自身の体験談も多いので、これで性別が判らなかったらイメージ作りに相当苦慮しただろう。
全体に怪異が小粒で、既視感のある内容も散見され、あまり印象には残らなかった。
「母の誘い」人に食ってかかる霊、というのは珍しく驚いた。
水に近付くと引き込まれる、という話自体は時折ある。そんな中には洗面器レベルの水で逝ってしまった例もあったようだから、無事に逃れきるのはなかなか難しいのでは。
「ベビーカーおばさん」ペットだけなら飼わないことで何とかしのげるとして、もし子どもが産まれるとなったらどうなるのか。そう想像するのが一番怖ろしかった。
「通行禁止」飲食系の配達車両にのみ障りのある道、というのは興味深い。
その理由、祠の正体など、もっと掘り下げてもらえれば、と残念なところも多い。
「真夜中の迷路」外国だと怪異のアプローチもやっぱり大分違っているのが面白い。 ただ、語学が堪能ではないので英会話を習っている、という人の聞いた話にしては、話が詳しく大分難しいもののようにも思えてしまう。
気になる作品もこのように少なかった。
最後の大作「白い顔の女」も悪い意味で気にはなったけれど。
一族に伝わる祟り咄、ではあるのだけれど、本格的なのは曽祖父の代位。それもまとめて簡単に記されてしまっているのでそれ程怖ろしくはない。
その後のストーカーなどは祟りとは違うだろう。聞く限りでは彼らは別の対象を見つけたり何か執着が外れてしまえばけろっと他にいってしまうらしいし、元々。
親子で女性の趣味が似ている、というのはそうおかしな話では無い気もする。
さらに、彼が祭の日にさらわれても、翌日には何事もなく戻されている。これは一体どんな祟りなのだろう。
家族が祟りに囚われてしまっていれば、事実とは関係なく反対はするだろうし。
とにかく、思い込みと強引な論理ばかりで一つも納得性も恐怖も無い話であった。
しかも、あとがきを読んで驚愕した。
この本の中には創作怪談も混ざっている、と。
実話怪談と創作怪談、ここの境界だけは絶対に侵すべきではない。
元々、怪談話はそれが(一応だとしても)実話だという前提で、そこにある程度信頼を置いて読むから驚きもし納得も出来るのである。新しい、と感じるのもそうだ。
その信頼関係が崩れてしまえば、どれもこれもただのインチキ、嘘の話、と疑ってしまわざるを得なくなる。
現実にはあり得ないようなことが現実に起きた、というから怖いのであって、創作なら何でもありなのだから怖くも何ともならない。新しくても当たり前になってしまう。
これまで創作怪談を読んできた限りでも、怖いと思えるようなものは皆無であった。
なので、今はエブリスタ編の作品は読まないようにしている。
上で気になった作品が創作かどうかは判らないけれど、評価点は新奇な事例である、というポイントに集中している。創作なのであればそれも撤回せざるを得ない。
こうした執筆方針を変えないのであれば、この著者の作品を今後読むことはあるまい。
元投稿:2020年3月頃
誘ゐ怪談posted with ヨメレバ松本 エムザ 竹書房 2019年12月27日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る