この著者の作品にはどうもインパクトが無く、どんな特徴があるかなど含めほとんど印象に残らない。
今回もああこんな感じだったなあ、と思い出すようなものは無いのだけれど、いつものように気になる作品のチェック数を確認すると、意外にも結構ある。
「沖縄鮫」いかに沖縄とは言え、川の上流に鮫はいないだろう。別のグループが来たことにより、実際に存在しているのでは無いことが証明されている。そういう意味ではUMAでもないようだ。一体どういう事象なのか、何とも気になる。
「幽体離脱」夢・幻覚の類のようでいて、それだけでは説明のつかない物証が残ってしまっている、という好みのネタ。ただ、その物証となるものが、現実に手に入れたものとも言えそうになく、ますます混迷の極み。数珠自体が体験者の記憶違い、というのであればそれなりに辻褄は合うけれど。
「雲海」UFOものはあまり好きでは無いのだけれど、この証言は興味深い。こうしたものが人によって見えたり見えなかったりするのであれば、現実に存在しているものでは無く、むしろ心霊の部類に属していそう。その方が何となく納得性は高い。写真にも写ったり写らなかったりするところも。
「七人」これは全く心霊現象ではない、という疑いはあるものの、怖い、という意味ではむしろ強烈。一体次に「何」をしたら駄目なのか判らないので、その恐怖が一生続いてしまう、というのも何とも厭だ。その分、注意して生きることにはなるのかも。
「延髄チョップ」霊から物理的な打撃を与えられる、という珍しい事例。彼らにも苦し紛れ、というようなことがあるようだ。
「おーいっ」死霊ではなく生き霊とでも言うべきものに呼ばれて救い出す、というのは聞いたことがない。しかも、同時に霊の声にもドップラー効果が存在する、という貴重な証言まで。だとすれば、こういったものにも物理法則は適用される、ということになる。面白い。
「だるい部屋」この話では何か怪しいものが出てくるわけではない。しかし、同じ部屋の男性だけが繰り返し自殺してしまう、というのはやはりおかしい。
最近、一見何でもなさそうなのに事故がしょっちゅう起きてしまう道路、には実は事故を起こし易くする構造が潜んでいる、というTVを観た。もしかするとこうした部屋にも何か人の精神に影響を与えてしまうような、物理的な何かがあるのかもしれない。
もしそうなら怪談、では無くなるけれど。
「おばあちゃんの味」子供たちがどういうものを指しておばあちゃんの味だというのか、祖母すらあまり知らない幼児がどうして「おばあちゃん」と判るのか、さらにはおばあちゃんばかりでおじいちゃんは無いのか、など謎が多い。
あるいは食べた瞬間におばあちゃんの姿がその場もしくは頭の中に浮かんだりするのだろうか。
その農家がその後どうなったのかも気になる。大人は平気なようだから大丈夫か。
「ひとふさ」は典型的な内容ではあるけれど、最後に相応しい大ネタ。
ただ、先輩は酷い目には遭ったとは言え、霊からは解放されているようで何よりだ。途中先輩を見た最後、というお決まりの台詞があったりしたので連れて行かれちまったな、と思っていただけに。
タクシーが何者とも知れぬ存在によって勝手に運転され消えてしまった、というのは事件になっていることからも疑いようのないところで何とも不思議だ。
こうして振り返ってみても、強烈な、とか凄い、と感じるような話は無い。
しかし、他では聞いたことが無いような貴重な証言、典型的と思わせておいてそこからひょいっと外れてしまう話など、ユニークなものが多数含まれてはいた。
これだけ読んできた怪談からまだ新たな知見を得ることが出来たのには感謝したい。
元投稿:2020年1月頃
実話怪事記 憑き髪posted with ヨメレバ真白 圭 竹書房 2019年11月29日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る