子供の頃、特にアレルギーに悩まされる、ということなど無く育ってきた。
幼少期の記憶があまり明確に残っていない、という残念な子供ではあったにしても、じんましんを発症した、という覚えはなく、喘息でも花粉症でも無かった。
ただ、体をひっかくとかなり強烈な蚯蚓腫れが出来てしばらく退かないというところはあったし、一度くしゃみをすると下手をすれば十回以上止まらなくなる、という現象もしょっちゅうではあった。
おそらく昔から過敏な体質ではあったようだ。
そう言えば、当時ツベルクリン注射をするとその反応が物凄く、5cm以上赤くなり中心部はぼってりと腫れてしまって熱までもっている、ことが普通でもあった。
これもアレルギー反応を利用しての検査らしいので(遅延型アレルギーと言うそうだ)、そのせいだったのだろう。
このあまりの反応に、本人としてはこれは結核になっているに違いない、と信じ込んでいた。病弱な主人公気取りだったんだろう。
しかも時折喉から出てくる臭い玉=「膿栓」を、結核で肺の組織が壊死したものだと思い込んでいた。まああんな臭いもの、有害な代物と思っても致し方あるまい。
一方で、人一倍小麦好きな子供ではあった。
パンもうどんもお好み焼きも大好き。
それにも増して好きだったのがホットケーキにベビーカステラ。
すいとんも大人になってもよく作っては食べていた。
新婚旅行で行ったイタリアでは毎食ほぼパスタ(特にマカロニなどのショートパスタ)だったのだけれど、日本食が恋しくなる、どころかますますパスタに惚れ込み、食だけ考えればイタリア移住も良いかも、とちょっとだけ真剣に考えたりもしたものだ。
まあ、あんな国に行っても働くことも出来ないしとても住み続けるのは難しそうだけれど。
ともあれ、思い返してみるに、主食だけで無く菓子などまで含めれば、小麦を全く口に入れなかった日、というのは人生でも意外に少なかったのでは無いか。
そのことが日々時限爆弾のように自分の身を怪しくしつつあったことなど、その時点では無論知る由も無かったのであった。