東京都美術館/ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント

2021年9月18日~12月12日 開催

2021.11.9拝観

 一度それなりに書いた文章がほとんど消えてる。
 入館前の前振りだけだ、残ってるの。
 書いた内容もまるで覚えていないし、あまりに悲し過ぎる。
 やむなく再度執筆へ。

 平日の15:30過ぎに入館したのに、かなりの混雑。
 会期が後半に入っていたとは言え、これには驚いた。
 数時間前まではかなりの雨だったのだけれど、天候にあまり左右されないのは事前予約制の弊害だろう。
 ゴッホ人気の凄さなのか、美術館の入館制限を徐々に緩めてきているのか。
 3フロア目(2階)の晩年の大型作品などは、閉館10分前でもまだ行列状態。チラシ・ポスターや図録の表紙などに使われている今展覧会目玉の糸杉作品(「夜のプロヴァンスの田舎道」)には、最後近くまで二十人位の人が群がる状況。
 コロナ禍以前でもあまり無い賑わいだったと言えよう。

 展示全72点のうち、ゴッホ作品は52点。
 しかし、その内20点は素描だったので、油彩は32点のみ。
 小品も多かったので、ちょっと少ない印象だ。

 スタートの展示はゴッホではなく、それ以外の作家たちの作品。
 以前観たことはあるようだけれど、作品数も少なく貴重なスーラやシニャックなどの作品はやはり素晴らしい。
 また同じ点描でも、スーラやシニャックはほとんどの部分に補色を対比させその効果を最大限狙っているのに対し、トーロップなどは概ね同系色でそうした展開はほとんど見られない。

 また、ハーグ派と呼ばれるグループの作品が結構好みだった。
 どうやらこれが3度目(3作品)の出会いとなる(例によって全く記憶には無い)ルーロフスと、全く初めてのハブリエルだ。
 いずれも丁寧に描かれており空気まで感じさせる深みがある。

 ゴッホの作品を見ていると、こちらまで何だか無性に楽しくなってくる。
 彼が感じていたであろう、弾むようなエネルギーがばんばんこちらまで伝わってくるからだ。

 鮮やかで濁りの無い、純度の高い色彩。

 ゴッホ作品はオランダ時代とフランス時代では、色彩が全く異なる。
 勿論フランスに渡ってからぐんと明るくなり透明感も増す。
 彼はフランスの、特にアルルなどの降り注ぐ陽光と、すくすくと天に向かって茂り伸びていく植物たち、収穫を享受する農民などに接することで、魂が開放されるような快感を得られたのではないか。

 その喜びがどの作品を通じても溢れ出している。
 それが何とも好ましい。
 いつ観ても、どれだけ観ても観飽きることが無い。
 本当にゴッホは大好きだ。

 晩年の「夕暮れの松の木」にはかなりはっきりと浮世絵の影響が現れている。
 特に右下に描かれている傘を差した老婆など、服装を除き広重の人物そのままではないか。

 何はともあれ、ゴッホの展示は出来る限り観ていきたい。