東京都美術館/ハマスホイとデンマーク絵画(ハンマースホイ)

2020年1月21日~3月26日 開催 (実質2月28日まで)

2020.2.27拝観

 このところ、これまでほとんど知る機会がなかった東ヨーロッパ19~20世紀の美術をテーマにした展覧会が相次いでいる。
 昨年ザ・ミュージアムで開催された「ロマンティック・ロシア」、そして今も国立新美術館で開催中(と思ったら新型コロナ騒動のため打ち切りに)の「ブダペスト」、そして今回の「ハマスホイとデンマーク絵画」。

 ロシアやハンガリーの19~20世紀と言えば、音楽ではとても慣れ親しんでいるところ。なのに、美術部門では作品を紹介されることすらあまり無かったこともあり、まあほとんど何も知らないに等しかった。
 デンマークとなると作曲家もニールセン位しか浮かばないものの、陶器やインテリアなど工芸ジャンルでは知らない仲でも無い。
 ただ、こちらも美術となると近年国立西洋美術館が購入したハンマースホイ(ハマスホイ)の作品が記憶に残った程度で、それ以外は皆目だ。それすら、国については全く意識には無かった。

 それがこうして接してみれば、無論ばらつきはあるにせよ、面白いと思う作家・作品は結構存在した。今回知ることが出来て実に良かった。
 まあ、音楽も美術も、そして彼らの暮らしも皆同じ民族や風土によるものなのだから当然といえば当然か。

 ちなみに、「ブダペスト」については出来れば別稿で感想を書きたいと考えている(8月2日追記:結局時間ばかり過ぎてしまい挫折)。

 先にもちらりと書いたように、ハンマースホイ(以下は国立西洋美術館の読みを採用しこの表記に統一)という作家の作品には1点だけ既に接していた。
 「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」という作品で、2008年に購入したもののようだ。
 前景は無人の部屋にテーブルと椅子だけがあり、画面中央に大きな存在感を示す扉があって、その向こうに後ろ向きの女性がいて何かしている。絵だけでは不明ながら題名からピアノを弾いているものと判る。
 何だか凄く冷ややかで対象を突き放しているような趣があり、そこに事件の予感すら感じさせてしまうような危ういムードが漂っているようにも感じてしまう。オランダの室内画のような家族の賑わいや温かな雰囲気というものは皆無だ。その辺りが北欧ならではか。
 描かれている人物が遠く後ろ向きなのもあって、他人の家庭を密やかに覗き見るような罪悪感すらうっすらと立ち昇ってくる。

 そんなとても印象に残る作品だったので、この一点しか知らなかったし他は尚更だったにも関わらず観てみることにした。

 実はハンマースホイの作品は展示全体の半数に満たず、しかも3フロアある中の最後の一階にほとんど集められている。そこまでは全く未知のデンマーク(を中心とする)作家が並ぶ。

 これがなかなか良かった。

 全体的にコンサバティブな作風ではあるけれど、結構しっかりと緻密に描いてあるものが多い。
 中でも、クプゲという作家などは素晴らしい。主に風景を綺麗に描き出している。

 展示も真ん中近くなると、室内画が中心になる。
 こうして集められたものを観ると、ハンマースホイの作品が突然生まれたのでも特殊なのでもなく、少なくとも当時のデンマークにおいては重要な主題の一つであったことが判る。
 とにかく情報の無い国のことなので、このように提示してもらえると実に勉強になる。

 更に気付くことは、ハンマースホイよりももっと前の時代から、室内画はどちらかと言うと後ろ向きの女性を描いている作品が多い、ということだ。ハンマースホイとの関連性を印象づけるためあえてそうしたものをチョイスした、という可能性はあるけれど。

 後半に入ってやっとハンマースホイ作品登場。

 若い頃は人物画が中心。ただ、その中にある風景画は、ブーダンあるいは柳々居辰斎のように空が極端に広くとられ、空と地面以外のモティーフは極力絞られている。
 空も地面も僅かな濃淡はあるもののあえて平面的で、抽象画に近い印象もある。
 結構好きな作風だ。

 次第に室内画がメインへと変わっていく。
 濃淡はあれど、先に書いたような魅力はそれぞれの作品が持ち合わせており、いつまででも観ていられる。
 こうして彼の室内画をまとめて観た中でも、国立西洋美術館の作品はとりわけ素晴らしい。一番の出来ではないか。よくこんな作品を入手出来たものだ。

 ハンマースホイの作品だけで37点。
 もっともっと彼の作品を沢山見たかったという気持ちも正直あるにしろ、まあよく集めたものだとは言えるだろう。

 北欧というと、冷たく暗い印象があり、雪景色ばかりなのでは、というかなり歪んだイメージがある。
 しかしここで描かれている風景は淡いとは言え温かみのある青空が広がり、草原や木々が生い茂る穏やかな大地、というものがほとんど。人々の暮らしぶりも適度に満たされているように感じられる。
 こうした描写が現実をそのまま写したものとは限らず、理想化されたもしくは願望と言ってよいものが入っている可能性はあるものの、デンマーク、という土地に対する認識を改める必要があるのかもしれない。
 そうした気づきを与えられただけでも意味のある展示であった。

 こういった良質の展覧会が、新型コロナ騒動の影響で中断したまま終了となってしまったのは(現時点では最後の部分は未定だけれど、他館の動向などからみて絶望的だろう:8月2日追記-結局予想通り再開されず終了してしまった)、何とも残念だ。

元投稿:2020年3月頃

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