現代怪談 地獄めぐり 業火

 怪談最恐戦2019出身の作家が多い一冊。
 やはりこうして読んで味わうには弱い。
 比較的しっかりまとまっているものは多い。しかし、全体に優等生的で、どうも及第点、という印象になってしまうのだ。突き抜けるものがあまり感じられないために、印象に残らない。怪異としての目新しさも稀薄だ。

 「憑いたおばさん」この話もどこかで聞いたような、と言えそうな話。ただ、霊能者と言われる人が何も知らなくても相手の事情などを言い当ててしまう、というのはこれまたこれまでにも接してはいても、改めてやはり驚く。
 また、それまでいた背後霊を押し退けて取り憑いてしまう、という辺りがいかにもおばちゃんらしくて笑える。

 「四棟の四階の四号室」静かに畳へとめり込んでいく多数の卒塔婆。実に不気味な光景だ。ビジュアル的にとんでもなく怖ろしい。そして不思議でもある。
 そのシーンを想像すると、幻想的にも感じる。何か荘厳な印象すらありそう。
 後に友人が卒塔婆を集めていたとしても、彼がこれを仕掛けたとはとても思えない。
 跡も残さず卒塔婆を同時にしまい込むなど、並大抵の技術では無いからだ。おそらく語り手にしてもそう信じている、わけでは無論無く、そうとでも考えておかねば恐怖に耐えかねてしまう、からなのだろうけれど。

 「土嚢袋」偶々自殺現場に居合わせてしまって「お持ち帰り」してしまった、というよく聞く話かと思いきや、オチで見事に一転する。稀少な事例だ。
 しかし、袋を被っていたのでは友人であることには気付きようもない。どうにも仕方ないだろう。
 ただ、こんな出来事があった後では、お参りに行くのが怖い、と怯えるのもよく判る。

 「部屋がおかしい」何とも不思議な話だ。
 最初は異世界ものかと思ったらそういうものでも無さそうだ。語り手が見ているのは本当に母親の昔の情景なのだろうか。でも何故そういうものを見させられるのか。
 また、その場面の前に出てくる煙とは一体何なのか。オチも急転直下の展開に驚かされる。そこで何があったのか、知りたくて堪らないのは勿論のこと。

 「歌箱」ちょっと懐かしい良い話、のように一見見えるけれど、おかしなことは幾つもある。
 保ってきた覚えの無い箱が何故来ていたのか、そこから何で歌声が聴こえたのか、そのアイドルのものではない曲とは一体何なのか。
 別に直接関係があるわけでも無い語り手のところにアイドルの霊が現れるとも思えないし、今挙げたようなことも不審でしかない。何か別のものが仮想している、と考えた方が納得いきそう。
 因みに、やはりこのアイドル、同じように好きだった岡田有希子なんだろうなあ。悲しい死に方をした以前のアイドルなんて他に思いつかない。

 「十字木」霊にいたずらを仕掛けたのとその彼の結末に因果関係があるのか無いのかは判らないけれど、なかなか強烈な内容だ。十字型の木にぶら下がりぐるぐる回る白い服の女性。実にフォトジェニックなシーンだ。それがその後に左右にぶら下がる親子、とこれまたインパクトのある光景に。絵面が凄い怪談だと言える。

 「天井裏の奇談」時期も場所も人も全く違うところで、奇っ怪としか言いようのない、しかもほぼ同じような事件が起きてしまう。それだけで充分に怪談だ。
 しかもその事件そのものがまるで都市伝説のような謎ばかり。後半の話では精神を乗っ取られつつもあったようで、第三者が証人にもなっているので怪異としての信憑性も高い。
 とても興味深い事例だ。

 「霊感少女と僕たちの失敗」「自称」霊感少女にしびれを切らし直接行動に出る霊。斬新だ。
 ただ、その後の展開は、やはり語り手の心の問題、という印象を逃れ得ない。写真にしても本人による無意識の行動、と捉えられなくもないからだ。
 結局それで自分の人生を棒に振ってしまって良かったのだろうか。思い切って対決する、という道はなかったのだろうか。あまりに急な決断のスピード含め、やはり語り手に主因があるように思えてならない。

 それなりに面白い作品もありながら、全体の印象としてはどうにも薄い。
 かえって何となくもやっとしたものが残る。

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