加藤 一:編/「超」怖い話 子

 竹書房文庫-竹書房怪談文庫の中でも一番基幹シリーズとなる「超」怖い話。27年目だというその新作である。

 結構印象に残る話が多かった。

 「レジ袋」とても奇妙な話だ。ゴミ袋と釣り針による罠、と言うが、それで何か、ましてや人など釣れるものだろうか。現に語り手には釣り針が引っかかったけれどすぐ外してしまっているし、怪異と遭遇しても襲ってきたわけでも無い。
 何か別の意図があるのではないだろうか。そう思うと、その理解不能さがむしろ怖い。

 「泥水」親戚にも似たような事件が起きていたとすると、何か因縁がありそうだけれど全く判らないのが残念。彼が死にそうな目に遭いながら何故誰に助けられたのかも。
 彼の場合、泥濘の場所に行ったわけでは無く、都会の中で存在しない筈の泥に襲われている、というのも不思議なところ。

 「賽の目」廃墟にぶら下がっていた紐は何なのか、そしてそれが何故友人の髪の中に入ってしまったのか。内容的には怪異では無い可能性もあるのだけれど、書いてあった言葉との符合もあって、なかなか不気味な作品ではあった。

 「対照的」無法な行動を行った物が報いを受けぼろぼろになっていく。他人の不幸、という蜜も加わって、スカッとした気分で楽しめてしまう。人間とは残酷なものだ。中でも自分は、ということなのだろうが。

 「椀」亡くなった家族が守ってくれていたのかと思ったら全く違っていた、というのは面白い。ただ、母では無い別の御先祖、という可能性もあるのではないか。
 今回出ていってしまったのだとすると今後が心配でもある。一方で、不幸な事件があまりに多過ぎるようにも思えるので、語り手が途中疑念を感じたように、何かを呼び寄せていた存在、という可能性もまた捨て切れない。

 「梯子」家の中に謎のスペースがある、という好物ネタ。ただ、この空間、かなり変な感じではあるけれど、おそらく収納スペースとして作られたものでは。怪異も血まみれというのはビジュアル的にはなかなかだけれど、そう強烈、というものでもない。意識不明というのは事故によるものと考えた方が良さそうだし、油紙にしても、傷に使われていたとは限らない。
 嫌な感じはそこここに感じるものの、何だか要素の結び付きが稀薄で、強引に繋いでしまったような印象を受ける。

 「海と道と床と首」特に父と母のエピソードは何とも不思議だ。怖い話というよりもその奇妙さ、そして不条理さが際立つ。実のところ怪異の中にも家族と関連する人間しか出て来ないので、何か因縁や祟りがあったのだとしてもその正体は全く判らない。語り手にもまるで思い当たるところは無いようだ。

 怖さを追求する傾向の作品よりも、何だか奇妙、不思議と思えるような作品が目立っていた。
 こうした作品集を読ませてもらう限り、怪談の世界の拡がりはまだまだ尽きることは無さそうだ。

元投稿:2020年4月頃

「超」怖い話 子posted with ヨメレバ加藤 一/久田 樹生 竹書房 2020年01月29日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る