三井記念美術館/敦煌写経と永樂陶磁

2020年9月12日~11月8日展示

2020.10.2拝観

 それ程書きたいことも無いので簡単に。

 ブラシの江戸屋さんやギャラリーなど行きたいところが重なったので、ついでということもあって訪問。

 まだ会期前半ということもあり、特に予約は必要なくとも、他には数人ちらほらと見かける程度。やはりテーマが地味だし。
 さらに現時点では16時終了なので、結構早めに到着しなければならない。

 前半は永楽保全の作品で後半は敦煌写経と、あまり脈絡がない。元々は仏像系の展示を予定していたのを延期した結果らしいので仕方ないところか。

 永楽保全の作品、というのをこれまでまとまって観たことはなく、大抵1~2点各地の美術館で見かける、というのが常だった。
 三井所蔵の作品にしても、入口チケット販売コーナーの反対側にひっそりと一点だけ展示してることが多い。ロッカーに行くことが無ければまず見落としてしまう。

 今回まとめて拝見出来たけれど、それでもあまり掴めなかった。
 とんでもなく高い技倆を持っていることは流石に見て取れるものの、何しろほとんどが写しや模倣なので、作家としての特徴はまず現れていないのだ。
 祥瑞写しなど、銘をちゃんと入れていなかったら騙されても判りそうにない。交趾三彩などもそうだ。
 まあ当時は既に本歌である中国陶磁など高価であり流通も多くはなかったろうから、それよりはリーズナブルで手に入れ易いものとして重宝されたのだろう。
 それに、元々陶磁器は作家性よりも一定の作風を代々受け継いで繋いでいくもの。
 今に至るまで、変化は勿論あるにしても、大枠では変わっていないところも多い。
 保全も自分は中国陶磁の魂を受け継いでいる、という意識だったかもしれない。
 独自性を気にするのは、近代芸術の求める「苦悩する作家」「唯一無二の個性」という風に毒されてしまっているからか。

 素直に見れば、とにかく綺麗な器たちではある。

 三井の敦煌写経は、新井薬師の三井文庫時代に一度拝見している。
 ただ、なぜか一点だけ、「摩訶般若波羅蜜経 巻第19」はその時には展示されていなかった、ようだ。例によって観た記憶は何も残されていないので、記録によって確認できるのみ。

 敦煌写経は時代もあって、とにかく装飾性は全く無い。
 ただし、文字も写経ということでほとんど崩したりはせずきっちりと書かれていて、それが一番の見所。

 中でも「長庵宮廷写経」と呼ばれるものが特に貴重らしい。
 料紙・筆跡共に最高のもの、だそうだ。でも、紙は触れるわけでもなし、見たところ特に違いは判らない。色も一点は白っぽい気はしたけれど、それなりの年は経た印象で大差ない。
 肝心の文字は、というと、これもそう感動はしなかった。
 確かに丁寧に書かれてはいるものの、何せ文字自体が小さく、抑揚もあまり付けていないので、ちまちました感じしかしない。余程もう少し後の写経の方が伸びやかで力強い見るからに美しい文字のものがあった。
 興味深かったのは巻末に書写者は勿論、校訂や確認した人間まで名前が列挙されているところ。チェックだけで三回はしたようだ。これなら流石に誤植は無さそうか。
 ただ、そうした体制もあってミスしてはいけない、と慎重になってしまった結果面白味に欠ける文字になってしまった気がする。

 全体に初唐から盛唐の作品がほとんどで、それ以前は隋期が一点のみ。
 これだけのコレクションなのに重文指定が一点もないのはそのせいか。
 最近日本にある敦煌経典のほとんどが偽作であると指摘されているそうだ。
 ただし、今回展示されている34点は3年にわたる調査の上真品であると認められたものだとか。所有しているのは112点だそうだから、それ以外はここのも偽作だったのだろうか。

 どの経典だったかはまるで覚えていないのだけれど、文中に「如如如如」というのが何度も出てくるものがあった。経典なので意味は全く判らない。
 しかし、その文字面のインパクトに思わず笑ってしまったし、「ジョジョジョジョ」と書かれているようでもあり、それもジョジョらしくておかしさが倍増した。

 やはり経文というのは見ているだけでも何だか落ち着く。
 これだけまとめて接することが出来て少しは心が洗われた気がする。

 急遽決まった展示だからだろうか、今回の図録は無かった。
 永楽保全についてはよく知らなかったので知りたいところではあったし、敦煌写経の目録は前回展示の際にでも買っていそうだけれど、現在探せる環境に無いので確認できない。残念だ。

 ついでながら、前に訪問した際の反省で17時閉店と判っており、三井が16時までなら充分に間に合うとふんで訪れた江戸屋さん。
 何と今般の状況で15時に閉まっており買い物できず。
 これまた残念。

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