東京藝術大学大学美術館/渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画

2021年3月27日~5月23日 開催

2021.4.6 拝観

 モニターになっている調査会社からTVCFに関する会場調査の依頼が来たので秋葉原~浅草橋のあたりに行くこととなり、そのついでに上野の展示でも、と思いまだ会期が始まったばかりのこの展示(「渡辺省亭」展)に。

 まだまだ序盤なのに、それなりに来場者はいた。最初の方だと熱心な人が来る気もするし、かえってそうなのかも。
 とは言え勿論混み合うには程遠い状況、のんびりと拝見は出来た。

 今回も、会場に入って最初の作品、迎賓館赤坂離宮の七宝額原画を観た瞬間に、来たことを喜び満足できる素晴らしさだった。
 初見では無いものの、最後に観てからは既に二十年近く。これ以上無く新鮮な気持ちで接することが出来た。

 作品は花鳥画(動物含む)が大半で、次いで美人画。それ以外がちらほら、といったところ。

 展示作品は多いとは言えず、第一会場が映像ホール、という謎の構成にもなっていた。
 しかし、それを逆に活かして、三階の会場では一点ずつ裏表の衝立形式で展示しているため、行列なども発生せず作品としっかり向き合えて快適。人がいたらそこを避けちょっとずらして観ることも出来るので自由度も高い。
 これは東京国立博物館の仏像展示の方法に倣ったものだろうか。
 作品数が多くなると難しそうだけれど、洋画などこの程度の作品数ということは時折あるし、今後広まってくれると良さそう。

 省亭の得意ジャンルは花鳥画。
 中でも生き物を描いた作品には素晴らしいものが多い。
 一番感心したのは、とにかくどの動物も動いている途中の一瞬を見事に捉えていることだ。
 本当に自然に。
 まだ写真で瞬間を切り取って、などということも出来ない時代、その目でしかと見据えてしまっていたのだろう。
 絵を観るとそこから前の動きやその後の動作などを想像することが出来、まるで動画が頭の中で再生されるような気分を味わえる。静止画なのに動画になっているのだ。
 構図としては奇を衒わず穏健な作風なのに、面と向かうと惹かれてしまい目が離せなくなるのは、そのせいもあるだろう。
 もう巧い巧くないの域を遙かに超えた、まさに神業、と言える。

 NHKの「日曜美術館」を見たら、省亭の作品はこの展覧会準備中に沢山見つかり合計500点を超えたそうだ。
 であればもっと多くの作品を展示してくれれば、更に楽しめより満喫出来た筈なのに。

 図録は一般書籍扱いだったのでその場では買わず、後にネット(HMV)にて購入。
 キャンペーンで取得したポイントを利用して手に入れることが出来た。有難い。

 やはり、名声と作家の実力は必ずしもリンクしていないことを、今回も痛感させられた。
 また、作家の個性、特徴を掴むためには、こうしてまとめて作品を見通すことが出来ないとなかなか難しい。
 こちとら、ただの素人なのでね。

 そういう意味で、こうした企画を実現してくれたことは、何ともありがたい機会となった。