• 澤村有希/令和怪談 澤村有希の怪奇ホリック

     おそらくは初めて接することになった著者。
     明記されていないものの、名前、体験者がほとんど女性であることなどからして、著者自身も女性なのであろう。
     と言うのも、内容についても女性怪談作家に比較的多く見られる思い込みの強さと主観的な解釈が目立ち、どうにも興が殺がれたからだ。
     典型的なのが「慶祝」。
     ここでは仏間の騒音と仏壇からものが落ちる、という物理的な怪異が起きている。
     これを改元のお祭り騒ぎ、と語り手が解釈している。
     しかし、改元だからといって踊り出すような人を見たことが無いし、タイミングによるかなり強引なこじつけとしか感じられない。
     また、全体的に怪異そのものよりも、語り手とそれを取り巻く人間関係の方に主眼が置かれてしまっているのもそう。

     怪異そのものは目新しいものも多いのだけれど、そういった付加的要素、気が逸れてしまうような内容がちりばめられているので、印象が弱くなってしまう。

     あえて印象に残った作品を挙げるなら「紙束」位。
     本の内容が気になるし、それが幻となってしまっているということにもロマンを感じる。ただ、この「黄表紙」、あくまでも返しただけで元々持っていた筈なのに、返却後急に不幸が襲ってくる、というのは何だか妙だ。貸し出しとしても家から外に出してしまったことが禁忌に触れてしまったのだろうか。それなら納得がいく。

     まあ、岩井志麻子の「現代百物語」などは怪談と言うより登場する人の方が面白いシリーズになっている感もあるし、この領域にまで到達できるならそれもありなのだろう。
     現状では人間ドラマの方はやや在り来たりで惹き込まれるには至っていない。

    元投稿:2019年12月頃

    令和怪談 〜澤村有希の怪奇ホリックposted with ヨメレバ澤村 有希 竹書房 2019年10月28日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る