2年前に発行されていた本。
どうやら買いそびれていたらしい。
稲川怪談の味は、怪異そのものにはないので、気になる話としてはなかなか挙げ辛い。
「見つけてください‥‥」遭難者の霊が、自分を見つけて欲しくて先導していく、という話は時折ある。
しかし、何故か友だちがいなくなって、と偽って捜してもらおうとする、というのは珍しい。
しかも、その「クミちゃん」自身、森の奥から呼ぶ声に誘われて消えてしまったようだ。
その二人のもの、かもしれない遺体が同時に同じ場所で見つかる。
なかなか奇妙な事例である。
「赤い目」かなりドラマティックな話ではある。ただ、ちょっと出来過ぎ、という気もしないではない。
特に、目に画鋲が刺さったからといって、警報の鳴る踏切に入り込んでいくものだろうか。
ただ、稲川怪談にしては悲惨なオチもついている作品で、読み応えはある。
「世間話」この話は以前ライブで実際に聴いたことのあるものだ。
そういったネタを文章として読み返すことが出来るのは有難い。
偶々縋った霊能者の家が、以前看取った患者さんの家だった、というのは、もう偶然ではあるまい。何か引き寄せる、というか導かれてここに至った、と考えた方が自然に思えてしまう。
将に因果応報。
こうした結末はちょっと胸がすく。
ただ、この話もちょっと納得のいかないところはある。
いくら検査で異常が見られないからといって、医者たるものが霊能者を薦める、などということがあるだろうか。
医者にもいろいろな人はいるのであり得ない、とは言えないものの、そんな対応をするような病院に診察を受けたいとは思わない。
既にちらちらと書いているように、稲川怪談本の魅力は、ライブの雰囲気を文章によって改めて味わうことが出来るところにある。しかも何度でも。
なので、怪異が凄くなくても、それなりに楽しめてしまう。
以前は実際にライブで聴いた話が多かったけれど、もう何年も行けていないので、そろそろほとんどが新鮮なものになっている。
そういう意味でも、有難い一冊であった。
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稲川淳二 リイド社 2020年07月22日頃