田辺青蛙/大阪怪談

 御当地もの第3弾にして最後。
 この著者としては前作「関西怪談」だったものを、今回は更に絞り込んで大阪限定。
 やはり今回も印象は弱いと言わざるを得ない。

 「箕面の頭蓋骨」おじさんについてはぎりぎり変な人、で片付けられる可能性もあるけれど、頭蓋骨については説明が付かない。
 元になっている頭蓋骨事件も未解決のようで、その真相が気になって仕方ない。

 「天王寺駅界隈の怪談」ここで語られているエピソードには左程のものは無いのだけれど、この地に関して。
 この辺に「スーパーホテル大阪・天王寺」がある。
 ここにある日宿泊した。
 すると一度就寝した後の夜中、突然目が覚めた。
 そこで何が見えた、というのでは無いのだけれど、何だか猛烈に恐怖心が湧き上がってき、怖くて堪らなくなってしまった。この感覚はこれまで一度も味わったことの無いものだ。
 霊を見ることなどまるでない人間ながら、一番霊体験に近かったのがこの時ではないかと、今でも思っている。

 「神農に会った話」いわゆる幽霊の話は数多聞いてきたけれど、半透明で内臓が見える、という事例はこれが初めて。極めて珍しい。
 神農を描いた絵画、というのはこれまで何回か観たことがあり、確かにいずれも獣染みて野性的な男の姿ばかり。女性、というのは一つもない。
 しかも、お参りに行ったからといって語り手の家に神農が現れるものだろうか。
 別物と考えた方が良さそうに思う。

 大阪は充分に都会なので、御当地とはいっても怪談については東京と大差ない。
 起きている土地が大阪だ、という程度だ。
 元々怪談界では大阪芸大が最大派閥でありエリートとも言える。
 なので、大阪を売りにしてもあまり新味は感じられない。
 しかも、相変わらずこの著者の怪談は、怪異自体が弱いし、捻りの利いた話もほとんど無いため、迫ってくるものが何も感じられない。
 今一つ、と言わざるを得ない。

大阪怪談posted with ヨメレバ田辺 青蛙 竹書房 2021年02月27日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る