御当地怪談、第二弾。
こちらは、民話の趣が強く、それはそれでまずまず楽しめた。
ただ、こちらも印象は強くない。
「出入りする老人」回忌法要を営んでもらえず、自ら読経の声と共に徘徊する老人。何だか哀れでもの悲しい。やはり生きている者の方が強かった。特に女性。
「碓氷峠」鞄が物理的に移動する、という現象はなかなかだ。
ただ、事故の回避を訴えるにしては、大分間接的過ぎやしないだろうか。語り手が察しの良い人だからよかったようなものの。
「奇岩」幾つか記されている話の内の最後の一つ。
石から水がこんこんと湧き出す、というのも珍しいけれど、何よりその石の中に小さな蛇が住んでいた、というのが興味深い。
金色、というところからして、生身の動物というよりも神のような存在なのだろうか。
それを煮殺してしまって、この家には祟りなど無かったのかも気になる。
「塚と石仏」この最初のエピソードにおける乙姫の行動が解せない。
男から実家に帰るから、と言われたわけでも無いのにそこを目指してしまい、その母親がつれなくしたから、というだけで死んでしまうことはないのでは。男の方の消息が知れないのも何だか哀しい。天文年間の話、ということになっているけれど、男が江戸に身を隠すあたり、江戸時代に入ってから成立した話なのだろう。
また、最後に登場する、諏訪の「万治の石仏」。
数年前に訪問しているだけに懐かしい。その結構おどろおどろしいエピソードと仏さまののんびりした顔貌・風情とのギャップが不思議だ。
怪談集、よりも民話集と捉えた方がしっくりくるような内容だった。後半紹介したように、各地の小ネタを集めた話も多かったし。
信州という地にはそれもまた合っていて良かったのかも。
何だかほっこりする、という怪談本とは思えない読後感を味わえる珍しい一作だった。
信州怪談posted with ヨメレバ丸山 政也 竹書房 2021年02月27日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る