黒木氏と並び、この著者(福澤徹三氏)も今過去本を集めているため、感想もこの二人が続く。
この本は、怪談本としては、これまで見たこともない程薄い。勿論物理的に。
当然ながら載せられている怪談数もボリュームも少なく、すぐ読み終えてしまった。
これで600円(税抜)。ちと高くないか。
「失踪」これは、怪談ではないのかもしれない。
しかし、奇談ではある。
彼女の行動、痣など、不審な点は多い。
一体何があり、今彼女がどうしているのか。とても気になる。
ただ、この話、あくまでも語り手のみに取材しているし、何となく精神的に安定していない感もある。
特に、最後に現在入院中、とあるけれど、これもそれに関わるものではないのか。
その場合、単純に病んだ人の話を聴かされた(読まされた)ということになる。
「一時間半の記憶」店にいる人間全員の時間が突然飛んでいる。
これはもう勘違いや寝ぼけて、というものでは無さそう。
一見の客が怪しい、とは言っても、何かしたわけでもなし、関係があるかどうかは判らない。
これもタイムスリップのようなものなのだろうか。
ただ、経験しても何も得は無いなあ。
「黒い縦線」怪異としてはど真ん中、王道中の王道ではあるけれど、天井から逆さまにぶら下がる白い着物の女性、あまりに怖過ぎる。
そんなものに遭遇したら、卒倒すること間違いなし。
夜中にインターホンが鳴るもののレンズで見たり開けてみたりしても姿が無い、という話は時折ある。
その内のいくつかは、これと同様であった可能性もある。
願わくば、一生出会さないことを。
「ベランダの写真」何だか収まりの悪い変な話だ。
どうも怪異の可能性が高い、といえるのは床に垂れていた水位。
謎の光、というのは死んだ男が照らしたもの、と考えることも出来るし。
この水にしても、自分でこぼしたのに気付いていなかった、とも考えられなくはない。
一方で怪異だとしたら、何が起きたのだろうか。
また、その男が何のために語り手の部屋の昼間のベランダなど撮影したのか。
死んでしまったのは何故か。そもそも自殺なのか事故死なのか他殺なのか。
その後何もなかったようだから、事件性は無かったのかも。
どうにも各パーツがかみ合っていない。
しかし、それがまた不気味さを増していることも確か。
とにかく、著者の特質もあって、読み応えは無い。
彼の作品にしては、不思議系の話は多かったけれど。
そのタイプは好み、ということもあり、読後感はそう悪くはなかった。
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S霊園 怪談実話集posted with ヨメレバ
福澤 徹三 KADOKAWA 2019年07月24日頃
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