何とも評価の難しい本になってしまった。
嫌、面白かったことには何の疑いもないのだけれど。
ここで展開されているのは、もう怪談本の範疇ではない。
まるでホラー映画、「魔界転生」を無理矢理見せられているかのようだ。
前半の一冊ではあまり大事は起きてはおらず、本当に二冊必要だったか、という疑問も残る。
内容的にももう凄すぎて、信じろ、と言われる方が難しい。
それでも、読み応えのある面白い物語になっていることは確か。
一旦読み出すと止めるのが何とも難しくなってしまう。
今回は、メインの話だけで終始しており、他の怪談は全く挟まれてはいない。
まあ、今回はどうにもそんなことは無理だろうから納得、ではあるけれど。
これまで、独立して語られてきた大型の怪談たちが、実は皆繋がっていた、ということが判明した。
あのビジュアル的に物凄かった仏壇が積み重ねられた呪いの装置、についても。
直接的な繋がり、ではないにしろ、加奈江の件もこの怪異の正体を理解する上で重要な前提となっている。あの辺りの知識なしにいきなり説明されたとしても、とても納得出来るものにはならなかっただろう。
著者は、何年も何作も掛けてこの作品に向けて準備し物語を構築していったというわけだ。
その構想は見事なものだ。
まあ、通常の怪談でもトップクラスに面白い作品を提供してくれる著者でもある。
その作家としての力量は並々ならぬものであるのは間違いない。
とにかく憎らしい存在であった真也が逝ってしまったのは、当然の報い、としか考えられない。
むしろ、その最期が呆気なく、伝聞の形であったことが残念に感じられた位。
しかも、死んでからもまだ登場する最高の悪役振り。しっかりと徹してくれている。
最後に末期の膵臓癌、と衝撃の診断。
彼の作品を読めることももうあまり無いのか、と何とも悲しく残念な気持ちに浸っていたら、実は別の病気だった、と。
ちょっと非道い。
まあ、それでも楽観できるような病気ではないようだし、日々暮らすのも本当にきついだろう。
それも、やはりアルコール依存症状態になったりしたつけが回ってしまった、とも言えそうだ。荒れるのはろくなもんじゃない。
つい最近読んだ「怪談火だるま乙女」と著者の状況が似ているな、と思ってそちらを軽く読み直してみたら、あの内容、実は2018年のものだった。
まさに今回の末尾と同じ時期だったのだ。
そりゃあ一緒で当然。
あの時はちゃんと読まずに、最新情報だと勘違いしてしまっていた。
あちらも訂正せねば。
著者自身の話となると必ず登場し、彼の愛情が窺い知れていた奥さま。
それが、何故か事情は伏せられていてこちらでも全く不明ながら、やはり難病で闘病中、しかも意思も確認できない様子。
逢うことも叶わない、というのは辛い。
また元の生活に戻れる日が来れば良いのだけれど。
これだけの大作、実話であろうと創作であろうとなかなかに堪能できたことは確か。
絶版になっていなくて良かった。
これで一連の物語は完全に完結した、という感じ。
この後どうするのだろうか、というのはちょっと気になる。
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郷内 心瞳 KADOKAWA 2019年06月14日頃
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郷内 心瞳 KADOKAWA 2019年07月24日頃