火葬場、葬儀社で働いていた、というユニークな経歴の怪談作家、そのデビュー単著。
その仕事に関連する話が大半を占める。
なかなか実情を知る機会のない業種でもあり、仕事絡みのエピソードにはなかなか興味深い話も多い。
ただ、怪談としてはほとんどが全く怖くない。書き方もあるのかもしれないけれど。
「怪談最恐戦2019」で優勝しているのだけれど、その時の話もおよそ怖くは無かった。
実話怪談、というより葬儀実話、の印象の方が強かった。
「仲良しの理由」あの世のモノの思考はやはり生身の人間とは全く異なっている、ということが判る。
まあ、元々何かしらの無念なり怨念なり未練なり、そういった類が霊になる原動力なのだろうから、ただ普通の「人」である筈はないのだ。
「中にいる」例え事故で扉が閉まってしまったとしても、それからあえて火を点火する人間などいないだろう、と思っていたけれど、後半に到り考えを改めざるを得なかった。
もし誰かに操られて行っていたのだとすると、そのまま着火、という段取りになっても不思議ではない。
これは何とも怖ろしい。生きながらに火葬される、などという仕打ち、想像するだけでも寒気がする。これこそ身近に体験出来る(かもしれない)地獄そのものだろう。
「金縛り」金縛り+夢遊病、である可能性がゼロでは無いものの、そういった症例自体聞いたことがないし(本来背反するような現象だと思うし)、長時間襲ってくる激痛、というのもおよそ聞かない。
同じ場所からの連続飛び降り自殺、というエピソードの方もそうあるものではなし、まさかの結末を想像すると相当に怖い。
「沖縄旅行」色々不審な点はあるものの、一人行方不明になっている事件なので不気味だ。
ただ、まずレンタカー会社の人が、以前事故のあった場所だ、というようなことをわざわざ知らせてくるだろうか。
そして、TVの向こう側から、どうやって語り手を発見したのか。TVで妙な映像を見たのは語り手なのに、被害に遭ったのが友人なのは何でなのか。
気になる点が重なってしまっている。
前半で出し尽くしてしまったのか、後半は一層息切れ感が強く、怪談としては今一つと言わざるを得なかった。
それだけでなく、どうも書き方のせいで損をしているようにも思われる。
「借りたゲーム」やら「とある旅館」などもなかなか興味深いネタだとは思うものの、読んでいてもう一つ盛り上がってこなかった。
冒頭にも書いたように、葬儀関連の話など、何だか勉強になったな、と思える本ではあった。
怪談忌中録 煙仏posted with ヨメレバ下駄 華緒 竹書房 2020年12月28日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る