またしても新著者。
竹書房も月5冊という異常なペースをそろそろ落とした方が良いのではないか。
もう書き手がいなくなってしまいそうな予感しかしない。
魚資源の枯渇問題が起こるメカニズムが垣間見える気すらしてしまう。
札幌の著者なので北海道の話がほとんど。とは言え、地方色は地名位で内容にはおよそ感じなかった。
怪談バー、という珍しい場所で毎日怪談を語る怪談師、ということで相当に期待したものの、実のところありきたりのネタをメリハリの無い語り口で書かれたものがほとんどで、読み応えは全く無かった。
感想もわずかに二編。
「H和の滝の人たち」関係があるのか無いのかも判らない怪異が次々と襲いかかってくる。この恐怖は尋常では無い。
稲川怪談を彷彿とさせる話ではある。とにかくそれぞれの事象は出てくるモノも行動もバラバラで繋がりが全く見えてこない。それもまた不気味。
「三笠の賽の河原」本来行けるような場所では無いところに行き着いてしまう話は好みなので比較的興味を持てた。
賽の河原、というのはどうにも怖い空間であることは間違いない。しかも、ここは石が積んであるもの以外全く無い、という。それは何とも珍しい。どうやって成り立たせているのか、何故そこがその場所になっているのかも理解できない。
最初はとぼけていたのが数年経って急に忘れてしまったようなのも不思議だ。
第一わざわざ連れていきながら何故教えてもくれないのか、何をしに行ったのかも気になる。
ただ、途中から何で彼女は一人で別行動を始めてしまったのかもちょっと不可解ではある。そのために家族がどこで何をしていたのかも判らなくなってしまったようだし。
大半の話で、冒頭語り手の口調を活かして再現する、旨宣言して本題に入る。
語り手自ら語る、という手法を取るのであれば最初からそれを徹底した方がすっきりする。木原浩勝氏が「隣之怪」シリーズで既に実現済みでもある。
一々それを読まされるのはまどろっこしいことこの上ない。
冒頭にも書いたようにネタの弱さはどうにもならないところながら、それに加えて描写で盛り上げる、というよりはむしろ平板な印象を強めてしまっている。
細かい話で言えば、擬音・オノマトペについてもやたらステレオタイプで陳腐な表現ばかりでうんざりする。しかもそれが多用されているので尚更だ。大半の話で「うわぁー」とか「ギャー」みたいな楳図かずお張りの悲鳴を読まされ続けるとげんなりする。
扉を開ける時も「ガラガラガラガラーー」と。お笑いか。
更に、明らかに特定できそうな地名を中途半端にイニシャル化する、というのもわざとらしくて嫌いだ。「G稜郭」なんてこれで何か隠したつもりか。やはりはっきり書くのはちょっと、というのであればGだけにすれば済むこと。
こういった言葉選びのセンスに辟易させられてしまう。
もし次回作があるなら、そこで最終判断としたいところ。
北縁怪談posted with ヨメレバ匠平 竹書房 2020年10月29日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る