占い師の怪談、ということで、どうなることかと結構危惧していた。
しかし実際に読んでみると、正統な怪談ばかりでなかなか楽しめた。
最初の内「異常干支」というのがやたら出てきて若干閉口したものの、本編には影響なく最後のおまけ部分に出てくるくらいだったのと、その内飽きたのか忘れてしまったのか全然触れられなくなり、安心して読めた。
全部で27編と長目の作品が多く、読み応えもあってそれも良かった。
「恐怖の理由」SNSを利用した怪異。怪異も時代に合わせ変貌していく一つの証である。命を奪われてしまうというのも強烈な障りだし、その死に顔の凄まじさがまた怖ろしい。
「義父」惚けていながら、なぜそこまで嫁の不倫を暴こうとしたのか。しかもあり得ない写真まで存在する、というのはまさに怪異。
ただ、元々大分間が入った伝聞になってしまっており、しかも嫁の友人が事件を起こす要因となったその写真のエピソードをどこでどうやって訊き出したのかが謎。
それと、この写真を他の誰も見ていない、というのはすぐに消えてしまったのか、嫁の頭の中にだけ見えていたのか。果たして本当に出現したのか疑問は残る。まあ、ずっと不倫の状況を当て続けた、というから不思議ではあるのだけれど。
「予兆」ここまで続けて、しかも関連性の無さそうな怪異に襲われ続ける、というのは凄い。何故災害の前にこんなことが起きるのだろうか。予兆と言えるような内容でもないし。眼が緑色に変わる、というのも貴重。是非見てみたい。
「手話教室」ほとんどの人は何かを見るわけでもないのに、そこに座ると来なくなってしまう、というのは興味深い。ただ、この話では教室の主催者の身に何が起きていたのか、それが一番気になる。
「ケータイ」この本の中では一番面白かった話。
死に際し、別れを言いに来る人は数多あれど、自分の秘密を隠すためにものを預けに来る、というのは聞いたことがない。確かに不倫については既にばれてしまっているようだし、何を守りたかったのか、気になって仕方がない。
しかも、物理的に手渡せたようでは無いので、実物がどこに消えてしまったのかも何とも不思議だ。
「戻れ。戻れ。伊吹、戻れ」語ることも出来ないような怖ろしい顔。一体どんなものなんだろう。想像することでその人なりの怖さが生み出される話だ。
語り手にその時何が起こってしまっていたのか、知りたかったなあ。
「静子」怨念の物語。王道とも言えるけれど、その報いがなかなかに強烈。結局皆命を落とすか社会的な死を迎えてしまっているので。
干支の件はともかくとして、それを気にしなくてもインパクトのある話だ。
ただし、風呂での死に疑問を持っているようだけれど、浴槽内での死亡は年間4,000人に及ぶらしい。多いとは言えないもののあり得ないというレベルではない。COVID-19の死者が現時点(2020年11月末)で2,000人弱だし。特に精神に異常があるというなら尚更。
不倫が関わっている話がやたらと多い。
それ以外にも結構語り手や周りの人物に問題ある行動を取っている人が多い、という印象だ。
占いをやっていると、やはりそういった人たちが沢山集まってくるのだろうか。
一時占いを職業として興味深いと思っていたけれど、そういう負の感情が吹き溜まってしまうのだとすると耐えられんなあ。
全体に大人しい感じの印象ながら、これまでに無いタイプの話も多く、それなりに勉強になった。
算命学怪談 占い師の怖い話posted with ヨメレバ幽木 武彦 竹書房 2020年08月28日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る