五人の作家による競作。
個人的に面識もあるイタコ氏の作品をまとめて読めたりしたのは嬉しいところながら、本全体に特徴が無く、怪談としても小粒で弱いものがほとんどであった。
そうした中で印象に残ったものといえば、まずは「犬」。
現実に発生した犬の骨だらけの現場というのも壮絶だ。そんなところに建てたマンション、何事もなく無事なのだろうか。
関係者に起きていることは犬好きであれば何とも悲しい話であろう。ただ、ただ、関係者全員となると相当な人数だろうし、中には既に犬を飼っている人もいたのでは。そこではどうなっているのだろう。また、いつまでもこのままなのだろうか。
「トイレで待つ女」一人の体験者から聞いた段階ではちょっと良い話とも思えたものが、偶然手に入った別の話からまるで違うものへと変貌してしまう。なかなかに怖い。
交通事故の裏にはこうした事例も混じっているのかもしれない。最初の体験者には同乗者がいたおかげで、状況の客観的な様子を知ることが出来るのも貴重。
「憑かれて同じように」でも先の「トイレで待つ女」同様、憑かれた人とそれを見守っている人の双方から話を聞けているのが面白いところ。
霊のターゲットになってしまったことで、本人が全く意識することなく異常な行動を取ってしまっている、というところも共通している。
怪異に遭遇してしまうだけならともかく、これらのように行動を支配されてしまったり、除霊しようとするのを抑止されたり出来るような力を持つ存在に出会ってしまうと何とも怖ろしい。
決してありきたりだとかつまらない、というものでは無く、どうも強く残ってくるものが無かった、というのは残念なところ。
今回の著者が皆淡泊な作風であることも影響しているのかもしれない。
元投稿:2019年11月頃
現代怪談 地獄めぐり 無間posted with ヨメレバ響 洋平/ありがとう・ぁみ 竹書房 2019年09月28日頃 楽天ブックスで見る楽天koboで見るAmazonで見るKindleで見るhontoで見る