2021年1月9日~2月21日 開催
2021.1.21 拝観
もう観てから時間も経ってしまったし、備忘録として一点だけどうしても残しておきたかった話のみ記しておきたい。
この展示、個人的には何はなくとも「有楽来国光」これを観に行くことが目的であった。
これさえ目に出来れば、後はもうどうにでも。
久々の新国宝、しかも個人所蔵とあってなかなか出品機会も無いものだからだ。
しかもこの一品、個人的にはちょっと懐かしいエピソード持ちでもあるのだ。
今から10年以上前、九州転勤のため福岡に住んでいた。
丁度その時期大宰府に九州国立博物館が開館。
国立博物館なので、特別展は勿論常設展示も充実しており、家からは一時間近く、福岡にしてはかなり遠方にあるにも関わらず、2~3か月に一回は来訪していた。
そんなある時、インターネットで調べた常設展示作品リストの中に国宝「短刀 銘来国光」とあった。
来国光の短刀のうち「来国光」銘で国宝指定されているのはこの「有楽来国光」しかなく、だとすれば貴重な新作と出会えることになる。
しかし、気になることが一つ。
九州国立博物館の所蔵品には元東京国立博所蔵だった国宝「太刀 銘来国光」があったからだ。
こちらは東京時代からもう10回以上は出会い続けているお馴染みさんである。
この時期、特に行きたい特別展は開催しておらず、他の展示品にも目新しいものはなさそうだった。
手間を掛けて行ったものの太刀だった時には目も当てられない。一日と交通費を無駄にしただけでは済まない(確か友の会には入会していた筈なので入館料はない)ショックに襲われることは確実だった。
そこで、元々かなり嫌いな電話で問い合わせることにした。
すると不安は的中。
短刀、というのは間違いで、太刀の方だという。
何とか被害は未然に防げた、ものの「有楽来国光」との出会いは先送り。
この作品が一層胸に刻まれることになったのであった。
それから10年余りを歴て、住む場所も仕事も相当な変転を遂げた末にようやく相見えることになった「有楽来国光」。
そういつまでも観続けていたではないけれど、通常の作品に対するとは別のさまざまな思いが去来したことは確かである。
しかも、もう一点、国宝「名物稲葉江」も実は未見の一点であった。
一回の展示で二点の新作国宝に出会える、というのは最早ほとんど望むことの出来ない出来事。
嬉しい誤算だった。
展覧会の表題になっている埋忠氏。
特に中心となっている埋忠明寿の刀は、龍を彫り込んでいるものが多く、なかなか見事。
刃文はみな緩やかにのたれている。個人的にはもっと直刃調の方が好き。
とにかく、作品数は多いとは言えないものの、充実した展示であった。