渋川紀秀・葛西俊和・真白圭/怪談実話競作集 怨呪


 ほとんど知らない三人の著者。
 新鮮に感じられるか、力不足にがっかりするか。
 残念ながら今回は完全に後者であった。

 「銀のハイヒール」は犠牲者も出ていてかなりヘビーな話。
 かなり凄いものではあるものの、オチが怪談とは全く関係ないのにそちらの方が強烈なので、何だか後の印象がそちらしか残ってこない。
 何だか損な気がする。
 ただ、いくら少々時間が経っているとは言え、三人もの人間が死んでいたら、その経過も覚えていそうなものだ。しかも合わせて十数年だから忘れる程の昔とも言えそうに無い。

 「早く気づいてあげられたら」でも怪異そのものは何だかおまけのようになってしまって、現実の人間関係の方が話の主軸。しかも、いろいろと裏がありそうなタイプの人間から一度祝福の言葉をもらっただけでころっと信じ直してしまう、というのはあまりに単純過ぎるのでは。まあ、そんな人もいるのだろうか。そっちの方が気になってしまう。

 「運の糸」などというものが見えるのだとしたら興味深い。
 しかも人のものを取ることも出来るとは。とは言え、その代償としてなのかは分らんにしても、命を失ってしまっては元も子もない。

 「見返り」はこの本では一番面白く感じた。
 都市伝説的な事件かと思いきや完全な怪異。しかも特定の霊では無く、何故そんなことが伝染病のように派生していくのか。
 土地に何か原因があるのかもしれないけれど、手掛かりは全く無さそう。不条理な話だ。

 「黒い渦」は王道のネタ(格安物件)ではあるものの、怪異の描写が細かく、なかなかに迫力がある。しかも結構強烈。

 不満を含めても気になる話がこの程度しかなかった。
 後は何とも平凡だったり、だらだらと長いわりにそれに見合うレベルの怪異が出てこなかったり。怪異と言うより精神の問題、と思える話もあった。

 新人を登場させるにしても、それで固める、というのでは無く三人のうち一人位に留めておいた方が良かったのでは無いか。
 まあ、そうすると力量の差が歴然としてしまってかえってバランスが悪くなってしまうのかも。
 とにかく、何とも不完全燃焼に終わってしまったのは確か。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です