小田イ輔/実話コレクション 呪怪談


 
 
 相変わらず比較的独特な味のある話は多い。
 しかし、今回もインターバル半年。流石に大分薄まってしまった感がある。
 詰まらない話というわけでは無いのだけれど。

 「インチキと霊能力」はコミカルながら実のところは語り手にとっては深刻な話ではあり、しかもそれがうまい解決に至る、という意外と少ないタイプの話。
 祈祷はインチキだったにせよ、この霊能者にはそれなりの力はあったようだし、きちんと役に立っているところも面白い。まるで貝木泥舟のような存在か。

 「お祭りの日」本来ある筈の無い記憶が生まれてしまうというのも興味深い。
 何だか切ない感じも悪くはない。
 ただ、まだ大学生という語り手が、高校時代親しかった同級生の顔すらほとんど思い出せない、というのは酷過ぎでは無いか。若年性痴呆症か何かを疑った方が良いかも。

 「その光景」のように、地獄の光景が見えてしまう、というのは嫌だ。
 しかし、地獄に近い人はその光景を見てしまう、などと言うことがあるものなのだろうか。第一、語り手は何故地獄行きが決まってしまっているのだろう。何か由縁はあるのだろうか。一切語られていないので謎は深い。
 描かれている内容も、いわゆる地獄絵図とはかなり異質であり不思議だ。

 「笛の音」は著者らしい、何とも奇妙な話。
 お祖母さんは一体何を怒っていたのか、家族の態度が急変したのは何故なのか、そして何より笛の音は何であるのか。最後に友人の性格が変わり敵意を持つようになってしまった、というのもその因果関係がまるで不明だ。

 「部分」のみが見えてしまう、というのも珍しい。しかもしょっちゅう見るとは。
 語り手自身がそれを疑っているというのも興味深いところ。

 こうして感想を書いてみても、やはり印象は薄い。しかも何だか事の真相には全く至っていないような話も多く、取材不足なのか、どうにも辿り着けそうに無いのでこれまで封印していたような話が多いのかもしれない。
 いずれにせよ、物足りなさは強い。

 エネルギーが変わらないのならともかく、一冊毎に明らかに劣化している現状、もう少し発行ペースを落とすべきだろう。
 精々年に一冊、というのがやはり良いペースなのでは無いか。 
 
 

久田樹生/「超」怖い話 怪怨


 
 
 何だかいろいろとハードで、感想も溜まってしまった。
 まずはこちらから。

 「怨」という題名のわりに前半はかなり淡泊で物足りなかった。印象に残る話も全く無し。
 しかし、後半長目の話になってくると、やっと本領を発揮し始めた。

 「蒲の穂」では、一体何がどういうことなのか全く判らない。確かに怪異は起きているようだし、奇妙なものやことは相次いでいるけれど、それらがきちんと結びつくことも無く、どこか宙に浮いたままぼんやりとしている。
 恐くは無い。だが、厭な話であることは間違いない。
 指のささくれを少しずつ刺激されるような、鋭敏なものでは無いにしろ僅かずつ感じる不快な気分。
 ただ欲を言えば「紙」の謎だけでも解いて欲しかった気はする。現物があるわけだし。

 「奴隷」の母親に纏わるエピソードは、何だか官能小説のような話だ。
 作中で語り手が母の話に疑問を持っているように、こちらも俄には信じ難い。
 それ程いわゆるテンプレなものだからだ。
 しかも怪異自体は起きているドラマにはほとんど関係が無い。ただ嗚咽が聞こえる、というのと、母親が生まれなかった子供たちを引き連れてきたことぐらいだ。
 しかし、この話は母親と語り手との再会とその後の出来事などを中心として、何だかこちらに迫ってくる内容ではある。

 「両面」は何だか「藪の中」のような話だ。
 姑と嫁、どちらの話もそれだけを聞いていれば、語り手には全く非は無く相手がおかしい、ということになる。嘘偽りが無ければ。
 そして長い月日のやりとりの中に紛れ込んでくる幽かな異常。
 怪異としては取るに足らない、と言ってもよいレベルながら、日々の暮らしの中にそんなものがちょくちょく紛れ込んできたら、精神的にはかなり疲弊していくだろう。
 そういう意味ではこの家族が三人とも相当に消耗しつつあったのは確か。
 そのうちに、夫が2か所同時に現れてくるなど怪異レベルも上がってくる。
 ところがそれで畳み掛けてくる、というわけでも無くまた沈静化はしてしまったようだ。
 この執筆がきっかけで和解できたようなのは良かったものの、御祓いをしたら事態はむしろ悪化してしまう。
 久田怪談の真骨頂とも言える、実にもって厭な話だ。
 腑に落ちないのは、この話には何の前兆も無ければ由来も判らず、とにかく怪異の正体が全く不明なこと。
 これ程残念且つ悔しいことは無い。
 とは言え、ことの経緯、起きている事象を読む限り、何か答えを導き出せるようなヒントすらほとんど無いようにも思える。
 起きている当人たちにとっては何とも狐につままれたようで、どういうことなのか考えるにも至らなかったのも当然と言えそうだ。
 改めて、話というものは一面だけでは真実、真相からは遠いこともあるのだなあ、という感慨も持たされた内容ではあった。

 今回、基本どの話も怪異はとてもささやかで、それ自体が話の核には無いものばかり。 更に、怪異や変事が何故起きているのか、それを伺わせる片鱗すら無いような、どうにも手掛かりの無い話に終始した、という印象も強い。
 じわじわとおぞましい感情も滲み出ては来るものの、やはりぐっと来るようなインパクトには全く欠けていたと言わざるを得ない。
 物足りなさともっと真相に迫っていてくれれば、という残念な気持ちが一番残ってしまう本ではあった。