宇津呂鹿太郎/異怪巡り


 語られている怪異自体がどうにも弱い。
 単に弱いだけでなく、目新しさも少なくて、何だかどこかで聞いたようなものが多くなってしまっている。ぱらぱら読み返してみても、あまり覚えてすらいないものばかりな程だ。
 長さとしても短くて読み物という面でも食い足りない、という印象しか無い。

 一つの話が終わると、著者の一言が入るのだけれど、そのやや強引な講釈も余計なものにしか感じられない。しかもあまり共感できないものも多かった。
 ただ唯一、前の話を受けて「~といえば」という形で繋げていくのは、これまたやや無理のあるケースも散見されるものの、実際の語りを聞いているようで評価できる気がする。

 何だか残念な一冊であった。

つくね乱蔵/恐怖箱 厭鬼


 いや、もう実にもって厭な本だ。

 タイトルに全く偽りは無い。

 これまでにここまで怪異とそれに関わる人々から悪意が感じられ、おぞましくすら感じてしまう本は無かったのではないか。

 勿論ここでの「厭」というのは褒め言葉だ。

 

 しかも厭な話というのは大抵様々な因縁が纏わってくることが多く、話として長くなるのが宿命、といった印象がある。

 しかし、ここでは短篇であっても、さらりとしかし何とも苦味のある後味を残してくれたりする。「二つの条件」「笑う女」「忌み名」などが典型的な話だ。いや、これらだけじゃなく、この本の話ほとんどがそうなのだけれど。

 

 また、日本の「ムラ」社会というのはこうした要素も内包しているのだろうな、と思わせる冒頭の二編、「黒神輿」「まだ見つからない」や「雛の贄」なども特に印象深い。

 やはり余所者は無理に閉鎖的な世界へ入っていかない方が賢明なのかもしれない。そんなことも考えさせてしまう。

 

 久々に「件」を思わせる(書きぶりは間違いなくそう断定してのものだろう)話に接することが出来たのも面白かった。しかも件と直接対面し、その予言と結末まで確かめられているのだから凄い。

 

 一体この本全体で何人が死んでいるのか。

 ここまで怪異による祟り・実害が列記されている本もまた珍しいと思う。

 こんなにも呪われると(憑かれると)人は簡単に死んでしまうのか、そんな驚きを感ぜざるを得ない。

 読み応えとしては、数冊分の本を読んだかのような充実感を味わえた。

 どの作品が好き、というのを選ぶことも出来ない位だ。

 

 こういったなかなか得難い話を大量に集めてこられるこの「つくね乱蔵」という作者、余程の凄腕なのか星の巡り合わせなのか。

 今後も注目せざるを得ない逸材だ。