怪談五色2 忌式


 こちらもアンソロジー。ただし、5人の著者はいずれも単著を出す程のメンバーなので、(一部を除き)安心して読める。

 

 最初から結構嫌な話で始まる。

 この「解体予知夢」にようにこれからに話が繋がっていきそうなものについては、是非きちんと続報を何らかの形で教えて欲しいものだ。例えそれが外れだったとしても。

 次の「オミヤマモリ」もその言葉の由来を含め気になる話。子供の気持ちも良く判るし、それによってもたらされた結末も悲しい。

 このように黒史郎氏の話は怪談にとって鬼門である「夢」をキーにしながら、何だか不気味な、そして新鮮な話が集まっていた。とても面白い。

 

 次の黒木あるじ氏の話には、「ババぬき」のように怪談としてはどうなのか(この手のゲームの場合、性格上明らかに勝てないタイプは存在するし)と思うものはあるものの、後半の話は恐怖譚では無いけれど結構好みで興味深い。

 「海亀の家」など、例によってその真相が何とか判ればなあ、とは思う。

 また、最後のオチは、一応本当の話だろうと信じてはおくけれど、ちょっと出来過ぎているようにも感じられてしまう。

 怪談を聞こうとする場所に幽霊が現れて語っていった、となったら凄いことだ。

 

 次の伊計翼氏。

 あまりに寒い。

 日常的な話から自然に怪談へと入っていかせようとする語り口など、落語を意識しているのかと思え決して悪い印象では無いのだけれど、ギャグがあまりにきつい。

 読んでいるこちらが何だかいたたまれない気分になってきてしまい、早く怪談に入っていくことを祈るばかりになる。怪談本を読んでいてこれ程居心地の悪い、お尻がこそばゆくなるような気分になったのは初めてだ。

 おかげで怪談の方もあまり頭に入ってこなくなってしまった。

 今読み返してみると、友人の家に行く話などは、序盤(母親が「あら、お友だち?」と言った時点で)概ねの事情は想像ついてしまったけれど、そのあまりにしっかりとした登場ぶりに驚かされる。

 「子供の日記」の話は、典型的なホラー小説的展開に、疑問の方が強く生じてしまう。

 第一、子供の日記に母親はどんな目的で誰に読ませようと書き込みを行なったのか。これが適度に謎を解きつつまだ判らないところを残す、という実に匠の技(小説によくある手法)を感じてしまうのだ。

 そして最後の話は、これまた嫌いでは無いけれど、残念ながら怪談では無い。

 

 朱雀門氏の話。

 「りょうあしカタアシ」この話が本当なのであれば、心霊現象は実在すると信じざるを得ない。こういった裏付けがとれるような話については、伝聞だけで無く間違いなくそうした痕跡があった、という医学的な証拠を是非確認して欲しいところだ。この場合、見ている人間も一人では無いわけだし。

 それ以降の話も興味深いものが続く。

 「震える三人」の逃げる雛人形というのも笑えるような話ながら、その移動する姿などはむしろ気持ちが悪く、印象は不気味だ。

 「つまみぐい」や「めし」も奇妙な話で、「めし」の方など、読んだ時に何だか方向感覚を失ってこちらまでちょっと眩暈に襲われたような気分になる。

 「誤作動」も一見実にありふれた話で怪異とも言い難いものだったのが、最後のオチでぞっとさせられてしまった。彼に一体何があったのだろう。

 そして「金曜日の出来事」。

 これが今回一番惜しい話だ。

 家族全員が白髪になるような恐怖体験。どう考えても尋常なものではない。それを片鱗すら知ることが出来ない、というのは悔しくてならない。

 勿論現実的にそうした展開になるのも不思議では無い。

 しかし、これをこのように書かれてしまうとその欲求不満が爆発してしまいそうになる。何も判らないのであればいっそ書いてくれなかった方が良かったのでは、と著者を怨みたくすらなってしまいそうだ。

 是非何とか真相究明に励んで欲しい、けど無理だろうなあ。

 

 最後のつくね乱蔵氏の話は、これまでに輪をかけて嫌な話揃いだ。

 しかも怪異の中身以上に、そこに登場してくる人物の性根がおぞましい。

 「家族の風景」は登場人物が、というわけでは無いけれど、時間の経過のうちに被害者(?)がどのように霊に取り込まれていってしまったのかを考えると恐ろしい。

 

 こうしてみると、全体にどかんと怖いな、という話はあまり無いものの、じわじわとボディブローのように効いてくるネタが数多くあった。

 しかも結構新鮮な目新しさもあり、久々に読後感は充実している。

恐怖箱 怪戦


 戦にまつわる怪談を集めた、というアンソロジー。

 しかし、やはりあまりに年月が経ってしまっているからだろう、それほど強烈な話が集まっている、というわけでも無い。
 第二次大戦絡みで今こうして怪談を語れるような方は、もう当時子供だった世代以降になっているし、現実に戦地に行かれた方にこの手の話を伺う、というのはなかなか出来るものでは無かろう。

 真相が語られないブラックボックス部分が多いのも特徴か。仕方ないとは言え、やはり残念なことではある。

 沖縄というのはやはり特別な土地であることがこの本からでも判る。旅行先としてはとても魅力的なところでもあるのだけれど。

 「あの日のこと」は戦後史の一端を浮き彫りにしてくれるような大作だ。怪談、という視点からすると異色かもしれないけれど、読み応えがあって結構好きだ。
 「自慢の祖父」の理不尽さも面白い。無理矢理真相を聞かされた上に今度は口止めされるなど、いい迷惑もこの上ない。
 「約束」も短いながら、ちょっとうるっときた。

 流石加藤一氏の編集によるもの、これはどうか、と思うような怪談は一つも無かった。

小田イ輔/FKB怪幽録 呪の穴


 このブログ初っ端から難しい作品を引き当ててしまった。

 

 通常の怪談本で言えば、これどうなの、本当に怪談なの、という話が結構多い。

 しかも、話者自身が夢や幻覚かも、と語ってしまっているものも少なくないため、一層そういった意味での怪しさが強まってしまっている。

 「あえて疲れる」「いがせでけろ」「すり替わった一族」中でも「拾った名札」などは偶然と考えた方がむしろ自然な気がするし、特段超自然的な現象が起きているわけでも無い。

 怪談本として考えれば明らかに弱いと考えざるを得ない。

 

 ただ、その代わり、通例には無いような不思議な(これらも怪談かどうか、というものではあるのだけれど)話が幾つもあるのも確か。

 

 「近くのスーパー」など一体どういうことなのか全く理解できないし(だから不思議)、「青色」も霊的な臭いすらほとんどしない奇妙な話だ。

 しかし、元々異世界譚が大好き、ということもあって、こういった話にはとても興味をそそられる。本当ならそんな体験をしてみたくなる位だ。

 

 さらには「お仕置きと五十年」のように、何だか話の展開もオチも何を狙っているのかよく判らない話もある。

 もう少しきちんと整理し筋道を推敲した方が良いのではないか。

 

 結構新鮮ではあったけれど、やはり何だか物足りなさの残る本ではあった。